今日ものんびり動物園

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ナッツの訃報に思うこと

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浜松市動物園のヨーロッパオオカミ、ナッツ(オス8歳)が11月25日に亡くなりました(公式発表)。まさか8歳という若さで亡くなってしまうなんて、本当に悲しく淋しいです。
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また国内では多摩と血統を別にする彼らの繁殖を期待していただけに、国内のヨーロッパオオカミの血統はいよいよ追い詰められてしまったと思うと残念でもあります。

公式発表からは詳細は読み取れませんが、亡くなった原因は尿管結石による膀胱破裂とのことでした。ナッツの写真とともに、その死因についてと、浜松での彼らの暮らしぶりについて思っているごく個人的な、身勝手な意見を述べます。

続きは折り畳みます。
浜松市動をよくご存知のかたには、違和感のある意見かもしれないことを前置きしておきます。




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(2012年5月撮影)
私が初めて彼らに会ったのは2012年の5月でした。初めての印象は、当時の多摩のオオカミたちよりも、表情が溌剌として気楽そうだなーといったところ。記事にもした通り、ペアの関係性やオオカミらしい行動は見られませんでした。ただ、ナッツが周囲を特に神経質に警戒する様子は、この時はあまり見られなかったように記憶しています。
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(2013年5月撮影)
2013年の体つきを見ると、少し身体が締まっているように見えました。この時も記事の通り、観察しての収穫はほぼゼロ。ですが、前年と比べると相方のメイのビクビク度合いがあがっており、ナッツも起きている間はなんとなく神経を尖らせているように見えました。2頭の警戒の対象は、自分たちの序列関係ではなく、檻の外のものに向けられていたように思います。
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(2014年5月撮影、以下同)
そして今年のナッツ。閉園の音楽が鳴って、飼育員さんが長屋にやって来たあたりで立ち上がったナッツ。尾を見て分かる通り、警戒というよりも恐怖に近いものを持っていると感じました。私は年に一回、合計でまだ3回しか彼らに会っていませんが、年を追うごとに、何かを怖がっている様子が強くなるのを感じていました。
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このときは身体をブルブルと震わせていて、「雨の日だから寒い?大丈夫?」って話しかけた気がします。困ったような顔でじっと見つめ返されました。尿管結石は一朝一夕でなる病気ではないので、この頃はもう、体調が少し悪かったのかもしれません。
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この時のナッツは震えながら、東屋の下に座り、しきりと首を動かして周囲を警戒していました。
この獣舎は隣のネコ科たちと違い、放飼場がぐるっと開けた造りになっています。裏は職員用通路で、関係者しか人が通りませんが、360度から見られていると感じる放飼場です。土も平坦ですし、目隠しになるような場所が何もありません。
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ナッツとメイは1歳くらいで浜松にやってきて以来、ずっとここで暮らしているそうですが…あまり環境に慣れているようには感じません。特筆すべきなのは、観察していて、彼らが排泄行動をするところをほとんど見たことがないのです。これが多摩の個体だと、一日に何回か、放飼場でも室内でも見ることができるのに…。
これはイヌの話ですが、排泄をしているときに飼い主の顔を見ているのは「ボクはいま無防備だから、リーダーが守ってね」とアピールしているんだそう。
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ナッツに置き換えると、自分はアルファではないと思っていた節がありますから、守ってくれる存在がいないことに加えて、安全に排泄する場所が無かったことになります。この360度、どこからでも人の目がある状態では、なかなかできなかったのかもしれません。
また、5月だと浜松では初夏の陽気にもなる暑さなのに、水を飲む様子も数えるほどしか見たことがありません。上記のことはたまたま、私が行った日に見られなかっただけかもしれませんが…。
尿管結石の原因は色々あるそうですが、人間と同じで尿意を我慢していること、水分を採らずにいることもまた、結石を作る原因になりうるのではないでしょうか。邪推かもしれませんが、この開放的な放飼場が、その原因の一端を担っているように思えます。

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病気のこともそうですが、メイも含めて昨年と今年の彼らの表情をよく見ていると、常に何かに怯えているのがわかります。何に怯えているのかはわかりませんが、年を追うごとにストレスがかかっていることは事実でしょう。せめてどこか身を寄せられる場所があれば…。職員用通路のほうは、ベニヤなどで壁を作ってもいいのではないか、と昨年から思っています。もしくは、彼らが入れるトンネルのような隠れ場所を一カ所、作ってもらえたらと。嫌になったときにどこか、人の目に触れられない場所が一カ所あれば、安心するのではないでしょうか。環境に対して柔軟性のあるネコ科と違って、狼はとても臆病な動物ですから…。

今年、東山のジャックも同じ病気にかかりましたが、職員さんの細かな気付きがあって、手術で一命を取り留めました。そのことと比べてしまうと、園側の事情はあるにせよ、過程で見られる血尿や、尿の出が悪い様子に気がつかず、膀胱破裂まで追いつめてしまったことは、本当に残念でなりません。
また、相方のメイに関しても下腹部が赤く、毛が抜けた状態になっていることが気がかりです。尿管結石になると下腹部を気にしてそのような症状も見られるとのこと。同じエサを食べ、同じように生活してきたメイもまた、同じ病気にかかるリスクがあるかもしれません。心配です。

(内情を知らない外側の意見です)浜松には多摩から、ミロの同胎が3頭行っていますが、いずれも若いうちに亡くなっています。亡くなった原因は公表されていないので不明ですが、そこから何かしら、飼育法や飼育環境に関して改善する要素はなかったんでしょうか。多摩でも飼育をしていますし、個体移動で繋がりのあった園同士、何の情報も共有できなかったんでしょうか。なんというか…動物たちの命がかかっていることなのに、動物園のこういうところがなんだか残念です。

猛獣ですし、なかなか難しいかもしれませんが、今後こういった見落としで命を亡くすことがないように…。オオカミたちに負担をかけない範囲での定期的な健診を行うこと、を全ての飼育園で確立してもらえたらいいなと思っています。

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ナッツ、苦しかったでしょう、よく頑張ったね…。こんな形でお別れすることになるなんて思ってもみなかったから、とても淋しいです。一年に一度会いに行くだけだったけど…、来年も、再来年も…だんだん年を取っていくナッツに会いたかったな…。お疲れさま…ありがとうね。
by hana440 | 2014-11-27 23:27 | 浜松市動物園 | Comments(9)
Commented at 2014-11-28 12:29
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hana440 at 2014-11-28 22:47
>鍵コメ様
コメントありがとうございます。
私も突然の訃報に加えて、死因に非常にショックを受けました。
彼らが落ち着ける場所を作ってほしいというのは、事情を知らない私の一方的な希望です。浜松で彼らが楽しく快適に暮らせるようになるなら、方法はなんでもいいんです。昔ながらの施設でも、工夫して楽しく過ごせるように努力している園はたくさんあります。
問題なのは、彼らが快適そうじゃない様子を気が付くことはできなかったのか、彼らの様子を見て、何かを改善していこうとは思ってもらえなかったのかな、という点でした。今回のことは非常に残念でなりません。

ひとり残されてしまったメイを思うととても心配です。また浜松に行かれた際は、彼女を応援してあげてくださいね。
Commented at 2014-11-30 10:12 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hana440 at 2014-11-30 17:17
>鍵コメ様
コメントありがとうございます。
構造というよりは、人員不足で飼育員一人の負担が大き過ぎるのではと思っています(これはほとんどの地方の動物園が抱えている問題ですが)。閉園前にネコ科長屋周辺を見ていると、一人のかたが、かなりの動物を担当されているのが分かります。作業のご負担も相当ある中で、全ての動物に常に気を配ることは無理なんだろうな、と私も理解はできますが…、そのしわ寄せで動物の命に影響を及ぼすのは、園(運営)としてはどうなんでしょうね。
古い施設も数あるなかで、確かにあのネコ科長屋だけが、どうにも周りから置き去りにされているような雰囲気は、私も感じています。
浜松市動物園は動物たちも、職員さんたちも好きなだけに、園や飼育員さんの批判をしたいわけではなく…。なんとも悲しく残念に思っています。
Commented at 2014-12-01 10:23
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hana440 at 2014-12-01 12:13
>鍵コメ様
コメントありがとうございます。
まだ若かったのに、残念ですね。メイの下腹部にはだいぶ前から異変がありましたし、その頃に一緒に健診をしてもらえたら…。

私が2012年5月に行ったときは、メイは震えていましたが、ナッツのほうはそんな様子はなくて、隣の隣でお掃除をしている職員さんをロックオンする様子も見られました(これはこれで関係がいいのかな?と思ってました)。私も、職員さんが棒を持って放飼場に入って、追い込む様子を見たことがあります。メイはとても怯えた様子でしたが、ナッツは尾をあげて吼えたて、攻撃するんじゃないかという動きを見せていました。
昨年今年と訪問して、職員さんに怯えているのではないか、というのは私も感じました。確証はありませんが…。
それもふまえて、彼らが来てから数年経つのに、何かしら改善を考えてもらえなかったのだろうか、と思うと残念です。

貴重なお話もありがとうございます。
原因は何にしろ、数年の間に4頭ものオオカミが若くして亡くなっているのを考えると、飼育環境も飼育法も、オオカミには向いてない園なのかもしれないですね…。
Commented by 青狼愛子 at 2016-07-11 20:08 x
ナッツと同じ地元のものです。
私も動物園側の不注意でナッツは死んでしまったのかな・・・と思う時があります。
いまだにナッツがいないのは悲しいし、会いたいです。
実在するオオカミでは特別な子でした・・・
ナッツの死から数ヵ月後にオーダーメイドしていたオオカミのリングが届いたんですけれど、驚くほどナッツに似ていました・・・
もしかしたら生まれ変わって会いに来てくれたんじゃないかって思いました。
死亡を知ったときに「生まれ変わってあたしのところへおいで・・・いつでも遊びにおいで。」って言いました。
一人になってしまったメイちゃんが心配です。
Commented by hana440 at 2016-07-12 22:38
>青狼愛子さま
コメントありがとうございます。
思い入れのある個体が、このような形で亡くなるのは悲しいですよね。
ナッツが亡くなってからだいぶ経ちますが、私も未だに記事に書いた思いは払拭できていません。
その後の浜松訪問でも、もう少し、あの長屋獣舎の動物たちに対して気を配って頂けたらな…、と思うことがありました。

メイちゃんですが、心配は杞憂だったようで、ひとりになった途端に悠々自適、明るい表情に変わったようでした(^^;) 彼女は群れでいるよりも、一人のほうが気楽な気質なのかも知れません(笑)その後の彼女の様子も記事にしていますので、ぜひご覧くださいね。
Commented by 青狼愛子 at 2016-07-14 21:31 x
メイちゃん元気なら良かったです^^
彼女は一匹狼タイプなんですね^^
私は例え死んでしまってもナッツの事愛しています。
初めて会った時「ナッツ。」と名前を呼んだらこっちを見てくれたのを覚えています。
実在するオオカミでは特別な子でした。
ナッツに似ているウルフリング
ずっと宝物です。