多摩オオカミ一家の次男のひとり、ロト(オス・当時11歳)が胃捻転のため、19年4月3日に急逝しました(
公式発表)。一報からずいぶんと時間が経ってしまいましたが、新盆を迎えたので、改めてここに記しておきます。
大放飼場で弟のロキ(現在11歳)とともに、2頭で過ごしていたロト。ここ数年、きょうだいの中では一番遠吠えをしたがる個体でもあったので、日に何度か、ロキと、あるいは独りで遠吠えをしている姿を見かけた方も多かったのではないでしょうか。
弟のロキとは最後まで良好な関係を築いていました。旧獣舎の時からとてもウマの合う様子で、過去にはふたりで共闘し、群れの2位だったロイに歯向かったこともありました。
ロト自身はずっと群れの中位にいたせいか、特に好戦的になる様子もなく、また上位になりたいという野心も強くなさそうで、きょうだいの中では欲のない個体だったと思っています。ロイ・チロと4頭群れだった頃はオスの中では最下位で、たびたび起こるロイとロキの諍いを諌める役割を担っていました。
ロキと2頭になってからはどちらが序列の上か曖昧な期間が続き、日によって上下が入れ替わっていたように推察されましたが、ロトは殊更に自分の序列を主張する個体ではなく、ロキとはのんびりと平和に暮らしていました。
群れの中ではあまり目立たなかった彼ですが、日常の中で個性を発揮する個体でもありました。特に良く見られたのが、このニオイ付け!昔からあらゆるニオイにとても敏感で、放飼場で何かを見つけてはスリスリ、ゴロゴロする姿が印象的でした。私は密かにロトをニオイフェチと呼んでいました(笑)彼のお眼鏡にかなったものは、骨、肉のかけら、ウンチ、昆虫、ミミズ、雑草、枝…はたまた飛んで来たゴミ(人工物)まで、多岐にわたります。オオカミがどんなもののどんなニオイに興味を持つのか、たくさんの答えを導き出してくれました。
また、きょうだいの中では底なしの体力を誇る個体でもありました。一度走り出すとなかなか止まりません。きょうだいたちと鬼ごっこになると、相手が諦めるまで走り回っていたこともありました。
晩年はあまりはしゃぐ場面は見られませんでしたが、その体力と引き締まった身体を見ていれば、園の訃報で「獣医泣かせではない元気な個体」と言われたことも納得。私も、何も起こらなかったら一番長生きするのでは…と思っていたのです。
胃捻転は大型犬がなりやすい病気で、給餌をきっかけに急に発症する事例も多いそう。
ロトも4月2日の給餌後すぐに異変が起き、その場に副担当さんがいらしたため、すぐに開腹手術になったそうです。早急に対処して頂けたとのことで、ロトの苦痛は最短の時間で済んだのだと思います。その日は手術後、ロトが麻酔から目覚めるのを待って帰宅されたそうですが、翌朝、獣医さんが出勤した時には亡くなっていたとのこと…。
胃捻転は一度起きると、助かるのが難しいとも聞いています。術後に覚醒できたロトは、すごく頑張ったんだなと思います。
私がロトに最後に会ったのは、亡くなる3日前。閉園の音楽が鳴り、帰る前に撮った最後のショットです。いつも帰り際に「またね」と念を送ると、必ずチラッと視線をくれるロト。この日も同じようにしてくれました。もう会えなくなるなんて、思いもしなかった。
訃報を聞いた時は突然のことで、受け入れるのに時間がかかりました。未だにすごく淋しいけれど…いまは、彼が天国で安らかにあることを祈ります。
ロト、本当にありがとう。できればもっともっと活き活きとした君を見ていたかった。ロトが教えてくれた色々な知見を、これからも大切にしていくからね。
(写真は緑の景色=18年8月、それ以外は19年内)
これは19年8月、お盆の放飼場。今年も緑が青々と茂って、酷暑でも過ごしやすそうです。
今年は亡くなったマロ・チロ・リロ、そしてロトの新盆。この1年で、4頭のきょうだいが亡くなり、淋しい限りです。ロボやモロ、そして亡くなった兄姉たちと一緒に、多摩に帰ってきてるといいな。
改めて、亡くなった個体と、いま多摩で暮らし続けているオオカミたちに、感謝の気持ちを伝える夏になりました。