繁殖期も終わったと思われる4月中旬頃になると、大放飼場組のメンバーは開放的な気分になってくるようです。今回は4頭になってから、毎年この時期に見られているメスのチロ(10歳)の小悪魔ぶり?を綴ってみます。
1位のロイ(右、オス9歳)からの挨拶に応えて、起き出して来たチロ。日中、昼寝をしている合間のふとした時に、ロイがこうして示威行動を起こすことがあります。大体オス個体に迫ることが多いのですが、この日は珍しくチロに向かっていきました。
チロも心得たもので、丁寧にかつ可愛らしく挨拶を返します。ロイはチロに構ってもらいたかったようです(笑)
こういうとき、チロは他個体のように下手に出て挨拶を返しません。この辺りが、アルファメスのつもりなのか、もしくはチロが4頭の中で、序列の外にいる特別な存在なのかもしれないと推測しています。
和やかに穏やかに好意的な挨拶を返して、ロイの機嫌が良くなってくると…
ふいっと挨拶を終わりにしてしまいます。ロイはまだ交流を持ちたかったようですが、チロのこの表情を見ていると、彼女にとっては、この挨拶は儀礼的だったように見えます。
冬の繁殖期の間はとても親密な様子だったロイとチロですが、暖かくなってくると、チロの気持ちが徐々にロイから離れていくように感じられ、「ただ1位の権威に従っているだけ」という表情が強くなってきます。冬の間見られていた重ねマーキングも、この時期になると途端にやらなくなってしまいます。
ちなみにこういう場面で、チロと仲の良いオスのロト(オス9歳)はどうしているかというと…
近くに寝ていたのですが、起き上がらず、ふたりのやり取りをじっと聞いていました。ロイがチロに対して挨拶をけしかけた時は、一緒になって入っていくと薮蛇になる場合もあります。今回は儀礼的な様子だったこともあり、ロトとロキは近くで寝そべったまま入ってきませんでした。
これを踏まえて…午後になり、チロのアプローチからロトが思わぬ行動に。
続きは折り畳みます。
丘の上で不意に始まったチロからロトへの挨拶。身体を擦り付けて、好意を表現します。
あんまりチロとベタベタするとロイに咎められるのを分かっているロトは、初めのほうは緊張した様子でした。それに構わず、かわいく迫るチロ。後ろでは伏せているロキが尾を振って、入るタイミングを見ていますが…
ロキが入れないくらい親密な雰囲気になっていくふたり。だんだんと気分が盛り上がって来たのか…
身体をピッタリくっつけながら、近くの巣穴に一緒に入っていこうとします…もしかして
気分が盛り上がっちゃって、交尾しようとしてる?ロキの微妙な視線もそれを物語っている気がします。
あわや、というところで向こうからロイが上がって来たので、慌てた様子でばらけるふたり…
このあとはもちろん、ロイへのごまかし挨拶に変わりました。チロも同じように挨拶していたところを見ると、ふたりともちょっと本気だったのかもしれません。
実は繁殖期の終わり頃から、下位のオス2頭ががチロや、(何故か)ロイにマウントする行動がちょこちょこと見られるようになります。今回はチロからアプローチをかけていた珍しい例でした。
チロは昔からロトと仲が良いので、本当はロイよりも好意があるのかもしれません。
ロトは(ロイを恐れるからか)滅多にチロにマウントすることはしない慎重派ですが、誘惑に負けてしまったのかな…。
こうしてグループ内のオスメスで、序列なくちょっとした好意のやり取りが見られるのも、繁殖期が終わってから。暖かくなって開放的な気分になるのと同時に、オスは冬の間に溜まった欲求不満が抑えきれなくなってくるのかなあと推察しています。
このあとは様子を見ていたロキ(左)が珍しく、自分からロイに挨拶に入って行きました。チロとロト、ふたりへの助け舟だったのかもしれません。なんとかロイからのお咎めはなく、この場は収束しました。
チロのロイへの好意は「強いから」という理由が見え隠れしているのですが、ロトへは、昔から序列に関係なく純粋な好意として示されているようです。ロトが1位オスだったら良かったのにねえ。