オオカミが前足をぐっと伸ばす「伸び」の姿勢は、ただのストレッチ目的以外に、「示威」「遊びの誘い(いわゆるプレイバウ)」の意味があると言われていますが、彼らを見ていると、二つの意味から分岐した細かな意図が潜んでいるように思えます。この日は大放飼場の4頭で、その表情を捉えることができました。ガラス面からなので写真が悪いですが、ご了承ください。まず前提として、この時の4頭の順位は、ロイ>ロキ>チロ>ロト でした。これを踏まえて以下。
遠吠えのあと始まった挨拶合戦。左にいる1位のロイ(オス9歳)に対して、メスのチロ(10歳)、ロト(オス9歳)が真っ先に挨拶に向かいました。この群れの場合、遠吠え後の挨拶の最中に、「伸び」をすることがルーティンになっているようで…
3頭での挨拶のあと、並んで伸びをするロイとロト。ロイは尾をまっすぐ上にあげて鬣を立てていることから、「示威」の意味に近いと分かります。一方隣のロトは、尻尾を大きく振りながらロイよりも顔が低くなるようにしているので、「遊びの誘い」に近い意図がありそうです。
挨拶に加わらなかったロキ(右、オス8歳)も傍にやってきました。特に、矢印で示したロイとロキに注目。
ロトはすぐに伸びを止めましたが、ロイは前傾姿勢のまま、じっとロキを見つめます。上位の自分に挨拶に来ないことを非難しているのかも。ロキの隣では、チロが不穏な雰囲気を感じたような表情を見せています。
ロイも同じく不穏な空気を感じたのか、ロイとロキ2頭の間を遮るようにしていました。ここでロイは身を起こします。ロキは特に反応を見せず、緩く尾を振りながらロイを見つめるのみ。挨拶に行く様子はありません。
ロキの態度で、またロイが怒るかなあ〜と思っていましたが…
続きは折り畳みます。
間に入ったチロが、何故かここで「伸び」。尾は緩く振っていて、彼女が上位でないこと、この状況から、ロイとロキを宥める、緊張をほぐす意図があるように推察されました。そんなチロを傍で見ているロキ、尾を緩く振るのみで、行動を起こす様子はありません。
ロイがまだ威張っていたい様子を察して、ロト(左)とチロはご機嫌とりをするハメに(笑)
知らん顔でその辺をウロウロしているロキにも「お前、ちゃんと挨拶くらいしろよー」な視線を向けているロト。毎回のことながら、ロイのご機嫌とりは大変そうです(笑)
結局、最後はロイがロトを組み伏せることになります。ロトは分かっているのか、ひたすら平身低頭。ロイも気のあう兄弟だからか、あまり激しく攻めるようなことはしないのが救い。
ロトを怒鳴って気がすんだところで、ロキがのこのこと戻ってきました。こういう、微妙に怒られないタイミングを見計らうのは上手なロキ…。それでも、ロイとの間には少し不穏な空気が流れます。
と、ここでロキも「伸び」。尻尾を緩く振りながら、ゆっくりと前傾姿勢に。これも威圧や遊びへ誘う様子には見えず、ロイへの「もう勘弁してよ」な意図があるように推察されました。
それでもこの日は、ロキが自分からロイに挨拶に行くことはしませんでした。ロトの後ろから、一緒にそおっと近付いて挨拶したり。ロイに反目しているわけではないようですが、威張りんぼをしている彼に近付くのは薮蛇だと思っている節があります。でもロキが行かないから雰囲気が拗れることもあるのに…彼はそれを感じてはいないのかな?
一度挨拶ができたらOKと思っていたのか、このあとはロトとロキで駆けっこになりました♪まあ、諍いにならなくてよかったよかった(笑)