7月の多摩オオカミ、大放飼場のメンバーの様子を二日分まとめて。春頃から続いている、ロキ(オス8歳)とロト(オス9歳)の小競り合いですが、6月頃に一旦決着がついたものの、群れ全体になんとなく不穏な空気は漂ったままです。
この日はロトからロキへの挨拶もみられましたが、ふたりともまだ表情が強張っていました。
そんななか、群れの雰囲気を良くしようと頑張っていた様子なのが、メスのチロ(10歳)。
いつもはあまり長い時間じゃれ付くことはないのですが、機嫌を取るようにロトにまとわりつきます。
別の時間にも。ロトのほうは穏やかに受けていましたが、なんとなく固い感じ…
ロキにも同じようにまとわりつく姿が目立ちました。この2頭に積極的に絡んでいくあたり、少し普段と違って見えます。
チロ自身は楽しそうにも見えるので、私が深読みし過ぎなのかもしれませんが、この日(10日)の彼女の行動から、もしかして、群れ内の雰囲気がまた剣呑になってきたのかな…?と感じました。彼女の挨拶を受けるロキやロトが、いつもより比較的固い表情だったのも気になります。
続きは折り畳みます。
チロの行動から、またロキとロトが不穏になっていると感じた要因は他にもあります。
チロからの遠吠えや、チロひとりで遠吠えする回数が多かったこと。ここのところは、ロキかロトの遠吠えから始まることが多く、チロが単独で遠吠えをすることはありませんでした。群れの結束を高める効果を期待しての遠吠えなのかも。
そしてこの日に限って、小放飼場を気にする時間も多かったこと。写真はロキも一緒に隣を気にしている時でした(彼は隣にネロがいる場合のみよく気にするので、いつも通りの行動です)。
この時間、小放飼場にはネロ&リロ組が出ており、ネロは見ているふたりに対して威圧を返し、リロは遠吠えをしていました。チロはこのときのリロの遠吠えにも応えていました。
午後になって、やはり同じ場所で隣を見上げるチロ。
このとき隣は交替したメロがいて、お互いに何かを語り合うようにしばらく見つめあっていました。
どちらの場面も、チロからは威圧や警戒するそぶりはなく、ただ気になっているような様子でした。普段はあまり隣を気にしないチロでもあるので、この行動も群れの不和を予期させるものかもしれないと感じました。チロは隣のメンバーに相談していたのか、それとも…?
どちらにしても、チロは彼女なりにロキとロトの不和をなんとかしたいと思っているようでした。
10日はロイも変わらず仲裁役を務めていました。
丘の上に上がってきたロキ(手前)とロイ。ロキは、あとから登ってくるロトをじっと見つめ、機を窺っているようでした。
その気配を感じて、ロイが宥めるように背中に顎を乗せます。右からロトが登ってきました。
ロキとロトの間には少し緊張した雰囲気が流れ、それを遮るようにロイがロキの背中に乗っかります。この後しばらくマウントしていましたが、ロイの表情が楽しそうだったので、軽い示威行動だったのかもしれません。
後ろに回ったロトが、同じく顎をロキの背中に乗せていました。ロキを咎めるような表情に見えます。ロキはロイの口元を舐めて応えていました。
ロイのマウントが解けたあとの、ロキとロトの表情がなんとも微妙…(笑)
そのあとは特にやり取りはなく、収容前にはロイの先導で4頭が一緒に駆け回って遊ぶ様子も見られました。やはり、ロキもロトもまだ微妙な空気だなあと思いながら10日の観察を終えました。
その次の週あたりに、zoo友さんが「ロキの耳が折れている」と教えてくださり、様子を見に行ったのが30日。
よく見ると、確かに左耳が少しひしゃげています。
横から見ると折れ具合がよくわかりました。担当さんに質問してみましたが、誰がやったかはわからないとのこと。30日の観察では、大放飼場のメンバー内ではとくに観察できた事項はありませんでした。交流が少なかったため、今のロキの立場がどうなっているかも測れず。
ちなみにこれが10日のロキでした。左耳は立っています。
予期した通り、再びロキがロトに対して威圧するような行動をとり、抑えに入ったロイが彼の耳を折ってしまったのか、もしくはロトが反撃した結果だと推測できます。怪我の程度を見ると傷口はあまり目立たず、たまたま牙のあたった場所が悪かったのかなと思われました。
ロキ自身はやられてしょげている様子もなく、いつも通り。彼はいつもマイペースで、怒られてもその場凌ぎで飄々としているところがあるので、めげずにまた同じことを繰り返す可能性があります。その時のロイやロトの出方次第ではまた隔離の憂き目にあいかねず、ここからまた、少々ハラハラしながらの観察が続くことになってしまいました。