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ミロ、波瀾万丈の狼生 4(2015〜2016年11月まで)

前々前回から続くミロのオオカミ生、最期までの2年間を振り返ります。
14末〜15年にかけての繁殖期は、メス同士の闘争が再び激化し、アルファが存在しない影響で大怪我を負う個体が増えました。そのため、次々と群れのメンバーが入れ替わりました。
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(以下2015年撮影)
15年初は、一番の味方だったリロと、積極的にミロを威圧していたチロが怪我をして隔離になり、ミロとメロのメス2頭・オス4頭の群れで展示されていました。メロはもともと中位が長く、好戦的ではなかったため、彼女と一緒の時期は序列確認のみで激しい闘争に発展することはありませんでした。その点では、このグループ分けのときまでが、弟妹と一緒にいる比較的穏やかな時期だったと思います。
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ところが、2月の中旬からメロと入れ替わりにチロが合流すると、雰囲気は一変。チロは1位のロイとともに、頻繁にミロを追いつめるようになります。
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それでも春くらいまでは外で休んでいたミロ。トンネルは同じく下位のセロが逃げ込む場所でもあったので、ミロが寝る場所はガラス面の角のほうと決めていたようです。これは担当さんが入れてくれたオモチャを楽しんでいるところ。このときは少し余裕もあったようでした。ただ仲間同士の遠吠えに積極的に加わる様子はなく、いつも上位からは離れた位置にいて、他個体とコミュニケーションをとることはありませんでした。
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余談ですが、この冬のミロがオオカミ生いち、おデブだった時期でした。冬毛だけでモコモコしてるのではなく、お腹の辺りが明らかにポッコリ。このあと糖尿病を患うことも予想できる体型ではありました。
ただ、病気の要因は給餌が原因ではないことが後々判明しましたので、それは後述します。

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繁殖期が終わるにつれてミロへの攻撃が沈静化するかと思っていましたが、逆にオス個体が加わったことにより激しさを増していきます。収容間際になると、必ずと言っていいほどシュート前で上位がミロを攻撃する様子が見られるようになりました。
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早春以降は、ミロは再び複雑な表情を浮かべるようになり、上位個体を恐れてトンネルの中で過ごす時間が多くなっていきました。また攻撃により、過去に負った頭の怪我が再び裂けてしまったり、新たに負傷することにもなりました。5月には決定的な大怪我を負ったため、ミロは弟妹から隔離されることになりました。

ここまで振り返った5年間、ほとんどをオメガとして虐げられて来たミロ。やっとやっと、その役目から解放されました。ここから晩年までは、のんびりと余生を過ごすことになります。
長くなります。続きは折り畳みます。





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隔離されてすぐ、頭の縫合手術を受けたミロ。術後少しあとの訪問で、こんな可愛い顔を見せてくれました。やっと安心した明るい表情が見られて嬉しかったです。
ここから二ヶ月ほどは、途中で兄弟から弾かれてしまったセロも一緒になって、主に室内で過ごしていました。
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8月の夜間開園の日、兄弟と交替で夕方から出て来たミロとセロ。とても楽しそうに、軽快に歩き回る姿に会えました。
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兄弟のニオイがあちこちに残っている放飼場でしたが、ミロは全く執着する様子がなく、かといって怯える様子もなく、ただただ外の空気を楽しんでいるように見えました。
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再掲ですが、この日のミロの写真は今でもお気に入りです。夕日に照らされた、穏やかな微笑み。
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9月に入ると小放飼場の整備がやっと整って、室内組が日交代で外へ出られるようになりました。ミロはこの頃に糖尿だと判明しましたが、動作はまだまだ元気。投薬治療が開始され、エサには療養食を混ぜるようになりました。
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寒くなってくると、部屋にはヒーターが置かれました。が、ミロが好んであたっている様子はなく、むしろセロのほうが愛用…zoo友さんと「キミのじゃない」と何度突っ込んだことか(笑)

10歳という高齢でもあったため、ミロの症状は日を追うごとにどんどん悪くなっていきました。寒くなってからは、放飼場に出すかは天候とミロの体調次第で当日に決まるようになりました。
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(以下2016年撮影)
久しぶりに気持ちよく晴れた真冬のある日、放飼場に出ていたミロ。
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もうこの時には目がほとんど見えない状態にあり、複雑な地形の小放飼場はミロには大変だったようです。とても慎重に足を運んでいましたが、まだ坂上のフェンス際まで登れていました。
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春になり、緑の茂みが高くなってくると、下で過ごす時間が多くなってきました。また、身体も痩せて来て、歩行にふらつきも出始めました。
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気温も高くなって来たので、収容までトンネルの中で寝ていることも。近くで見られるのは嬉しかったな〜。
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丈の高い草が鼻先に当たるのが嫌で、ほぼ同じような獣道を行ったり来たりするようになりました。これは行こうと思った先に太い草があったので、引き返したところ。
初夏あたりから、排尿しようとしゃがんでも尿が少ししか出なかったり、腰に痛みがあるのか、途中で排尿を諦めたりする様子が頻繁に観察されました。このときにはもう、だいぶ腎臓に影響が出ていたようです。
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更に気温が高くなってきた8月には、ミロの体調を考慮して完全に室内飼育に切り替わりました。久しぶりに撮れたセロとのツーショット(^^)
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室内でひとりのときは三部屋繋いだ広さを、自由に行ったり来たりしていました。見ていると手前に来てくれることが多かったです。身体は苦しそうでしたが、表情は最後まで明るかったのが救いでした。

症状は悪化していく一方で、9月の中旬に起立不能になり、そのまま入院することになりました。入院したことで、今までできなかったインスリン注射を受けられたため、一時は退院できるまでに回復しました。しかし退院直前に再び病状が悪化し、結局、獣舎には戻ることなく、11月5日の朝に亡くなりました。
入院してからの治療は全く抵抗なく、注射なども素直に受けていたというミロ。母親のモロも素直に治療を受ける賢さがありましたが、娘のミロも同じように賢い個体だったなと改めて感動しました。
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ミロ、本当に良く頑張ったね。辛いオメガ生活のときも、のんびり余生を過ごしているときも、いつも穏やかな表情を崩さないミロが大好きで、顔を見るとどこか安心感がありました。ミロがオメガだったおかげで、他の兄弟たちが助けられていることも多かったと思います。
16年の夏頃からは明らかにしんどそうで、これ以上「頑張って!」とはとても言えず、ただただミロが少しでも穏やかに、苦しくないようにと祈る毎日でした。
ミロ、本当にお疲れさま、長い間ありがとう。天国で大好きなお肉をたくさん食べて、のんびり、のんびりすごしてね。

ミロの追悼の記事はこれでおしまいにします。最後までお読み頂き、ありがとうございました。



以下は、病気についてのことになります。丁寧にお答えくださった担当さんには、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。

ミロの死因は「糖尿性腎症」と発表がありましたが、実際は糖尿病ですから全身に病魔が及んでいたそうです。この死因を知って「管理されてる動物園の動物なのに、糖尿病になるの?」と疑問をもたれる方が多くいましたので、要因になったことを以下に綴っておきます。
決して園の管理不足ではないことと、メスの末妹・リロも同じ病気を患っていることも前置きしておきます。

先に糖尿病と分かったのはリロでした。そこでオオカミ全頭の尿検査が実施され、リロに加えてミロも糖尿病であるとの結果が出ました。あとの個体は全て正常だったそうです。
その後詳しく分析した結果、繁殖制限のためにメス個体に打っていた薬が一因であったことが分かったそう。
糖尿病自体は複合的な要因(遺伝など)が重なって発症する病気でもあるので、全てがこの薬の影響とは言い切れないそうですが、過去に富山のシンリンオオカミ・ナナ(メス享年9歳)も糖尿病で亡くなった要因が同じだったと聞いていますので、この投薬による影響はかなり高いものと推察されます。

これは二、三年に一度、メスのうなじあたりにカプセル型の薬剤を埋め込むもので、オオカミ(イヌ科)の繁殖制限の方法として広く実施されています。薬を打つと、メスのホルモン分泌を抑制して発情を来なくする代わりに、体内のインスリンを分泌する機能がうまく働かなくなってしまうそうです。
糖尿病になるかどうかは個体差らしいので、だからこそ若いリロも罹ってしまったということですね。
ミロの場合は加齢もあって、病状が急に悪化したそうです。長女ですから投薬の回数も多かったでしょう。
これが判明したことにより、多摩では今後、薬を打つのは控えるとのことでした。多摩のオオカミたちの場合は高齢ですので、ここから繁殖する可能性はゼロに近いと思いますが、発情が来ることによる闘争なども想定されますので、都度しっかりと対応して頂くことを期待しています。

動物園の限られた敷地で、兄妹間の繁殖をさせないようにして「群れ」として展示するには、こうして薬で抑制する場合もあります。他園のオオカミでも、この方法で繁殖制限をしているところがありますので、今後が心配になりました。
動物園の動物も年々長寿の傾向にあり、オオカミもその例外ではありません。将来、病気になるリスクを負わない方法ができるのなら(繁殖期だけオスメス隔離など)、きっとそのほうがいいと思います。また、トレーニングを入れるなりして、お互いの負担なく定期的に血液検査ができ、病気を軽度で見つけたり、予防できるような環境が、どの園でも当たり前に整えられることを願っています。

いち来園者が僭越だとは思いましたが、この事実が広く認知されることを願って、ここに記しておきます。どうかみんな元気で、穏やかに長生きできますように。
by hana440 | 2016-12-31 17:56 | 多摩動物公園(オオカミ) | Comments(0)