チロが合流した辺り(
参照記事)から、再び下位への風当たりが強くなってきた多摩のオオカミたち。この日、とうとう最下位のミロ(メス10歳)が大怪我を負ったために、群れから隔離される運びとなりました。
ミロは収容前までの一日を、このトンネルの中で過ごしていました。よく見ると、頭に裂傷ができています。
トンネルの反対側には心細そうな、オス下位のセロ(8歳)が。
この日は1位のロイからの威圧が頻繁にあり、セロがトンネルから出ようものならこんな感じ。
トンネルに逃げ込んでも、度々威圧をしにやって来ていたロイ。機嫌が悪いようには見えませんでしたので、こうしてセロを追いつめることが常態化してしまったのかなと感じました。ますますセロとの折り合いが悪くなっているように見えます。
疲れた様子でトンネルにいたセロ。奥にミロが寝ていたため、深くは逃げ込めず難儀していたようです。午後に飼育員さんが姿を見せるまで、トンネルから出る→ロイに追い込まれる→トンネルで落ち着く、の繰り返しでした。
続きは折り畳みます。
今までミロを威圧して来たチロ(メス9歳)はというと…
ロイに伴われてトンネルの前には行くものの、手前にセロがいるために手出しできないのか、少し様子を見て踵を返すこと数回。いつも不思議なのですが、トンネルの反対側に回って威圧しようとはしません。「トンネルの奥にいる時は、しつこくしない」という兄弟間のルールがあるのかも。
飼育員さんが姿を見せたときに、やっとトンネルから出て来たミロ。
明るいところへ出てくると、耳の後ろのほうも皮膚が裂けているのが分かりました。あとで担当さんに伺った話では、以前の傷がまだ完治しておらず、闘争で噛まれ引っ張られた際に、裂けてしまったようだとのことでした。あまり出血はしていませんでしたが、痛々しいのに変わりはありません。
やはりこの日も、シュート前でチロ(右)と闘争になり、そこへロイも加わっていました。危害を加えたのは主にこの2頭なんでしょうね…。
チロとロイがミロを追いつめていた時の他の3頭。セロ(中央奥)はなんとかロイの気を逸らそうとウロウロしていましたが、2位3位のロトとロキは完全に傍観者…
…だったはずが、雰囲気にのまれたのか、やがてロト(右、オス8歳)もミロ攻めに加わるようになっていました。この時はチロの味方をして、というわけでもなさそう。今まで日和見だったロトまで、こんなふうにメスを攻めるようになるとは驚きました。
ロキは相変わらず我関せずのようでした。彼ももう少し、ロイを止められる存在になってくれたらいいのにな…。
それにしても、ロイはミロを攻めているときに面白がっている表情なのが、本当にどうしようもない。完全に弱いものイジメをして楽しんでいる様子なのが、悲しいです。
この後、小競り合いをしているうちにシュートが開いて、室内へ収容になりました。収容後、ミロはセロと一緒に、他の展示組とは部屋を分けられていました。
開いてしまったミロの頭の傷は縫合しないと治らないとのことで、この日から展示組を離れることになりました。その後すぐに縫合手術が行われ、群れから離れて安心したのか、今は元気に笑顔で過ごしています。
旧放飼場の時からこれまで、大怪我を負いながらも隔離されずに下位のまま、何年もずっと不遇の時を過ごしていたミロ。群れで展示するにはどうしてもオメガという立場は必要で、ミロを除いてしまうとまた新たな闘争が起きるという理由から、群れの中に留め置かれていたのは気の毒でした。いままで、本当に良く頑張ったと思います。これからの余生、思いっきり羽根を伸ばしてほしい。
とうとう、展示組は5頭になってしまいました。その中で、ただひとり不和なのがセロ…。世渡り上手の彼ですが、それも最近のロイには通用しなくなってきました。これから彼の兄弟間での処遇がどうなってしまうのか、不安材料しかありませんでした。数ヶ月あとに彼も群れから離れることになるのですが、経緯は追々、記事にしていきます。