今日ものんびり動物園

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立場が悪くなっていく下位個体 2(2014/12/23)

前回から引き続き、本格的な繁殖期に入った同日の様子を綴ります。
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この記事では、現在の兄弟たちの中でオメガと思われる、メスのミロ(当時9歳)を取り巻く状況を取り上げます。
まず以前の記事、10月からのメスたちの動きとしてあげた記事と、それに影響されていったと思われるオスたちの記事で触れた、群れの勢力分離を以下に書き出すと

ロイ派=ロイ♂1、ロト♂4、チロ♀5、メロ♀6
リロ派=リロ♀2、ロキ♂3、セロ♂7、ミロ♀8  (性別のあとの数字は当時の推定順位)

8頭すべてを推定の序列順に並べると
ロイ♂>リロ♀>ロキ♂>ロト♂>チロ♀>メロ♀>>セロ♂>>>ミロ

複雑になってしまいますが、水色は強気のロイ派、桃色は守りのリロ派と色分けをしてみました。
以上をふまえて、ミロを巡って激しい闘争になった様子を振り返ります。私が「彼らは完全に派閥が分かれたのでは?」と考えたきっかけになったのが、この日の様子でした。
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丘の上で突然始まった闘争。1位のロイが、ミロへ仕掛けたことをきっかけに、そばにいたチロもすぐに加勢。
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2頭はそのまま押さえ込みに入ります。すると、リロがミロを助けるために寄ってきました。奥でメロも見ていましたが、彼女はひとまず様子見のようです。
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やってきたリロはまず、下位のチロを抑えにかかります。ミロはロイを単独で相手することになり、幾分負担が減りました。
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小康状態になったのも束の間、新たにミロを攻撃しようと襲いかかったのは…
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先ほど奥で様子を窺っていたメロでした。自分より上位のチロが抑えられた途端にロイに加勢したということは、ロイへのアピールも多少あるのかもしれません。彼女が威圧ではなく、下位をあからさまに攻撃したのは初めて見たので、非常に驚きました。

続きは折り畳みます。とても長くなります。





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リロはメス2頭の前に立ちはだかり、攻撃をやめるように威圧します。
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ロイが再び攻撃を加え、ミロが悲鳴を上げた瞬間に、リロ独りで頑張っていた包囲網が突破されてしまいます。騒ぎに駆けつけてきた兄弟のうち、ロキは距離をとってヤジ馬状態。そしてロトは…
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やはりロイに加勢するためにミロを攻撃します。ミロはここで、ロイ派の4頭に囲まれ、四面楚歌の状態へ…(写真の文字は「ロト」が正しいです。ロイは中央ですね。申し訳ないです)。
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4頭を振り切ろうと、トンネルのほうへ走るミロ。追い討ちをかけようと追うロイ・ロト・メロ。左手前では、リロが再びチロを抑えにかかります。
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なんとかトンネルへたどり着いたミロですが、ロイがなおも執拗に威圧します。振り切られたメス個体2頭も、ミロを攻撃しようと迫りますが、リロが素早く回り込みます。
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ここでロイ派のメス個体(チロ・メロ)が分岐します。メロは尾を振りながら、ロイの近くへ。視線はミロへ向けたままです。
チロのほうは、リロに掴まりミロへの攻撃は叶わずに終わりました。
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メロはロイの隣に行き、「どうする?やっちゃう?」と言いたげにロイの顔を見、ミロを睨みながら尾を振って身構える、という行動をとりました。ロイの威光をかさに来て、自分もミロを攻撃したい!という感じにも見えますし、繁殖期故にロイへゴマをすっているようにも見えました。
今までこういった闘争が起きたときには、メロはいつも傍観しているだけだったので、こうして積極的に攻撃に加わるそぶりを見たのもまた初めて。アルファのいない繁殖期の影響は、彼女にも変化をもたらしたようです。
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結局、ここでロイが急に飽きたように踵を返したので、ここで一旦、不穏な空気が溶けたかに見えたのですが…
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ロトが再びミロへ威圧を始め、それを機にまたチロとメロがジリジリと迫ることに。ただ、ロイがいないからか、3頭とも思いきって攻撃に出られないような感じでした。
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しかしすぐにリロが飛んできたので、チロとメロは退散し、長い長い闘争はここでお開きになりました。

以前の記事でも何度か書きましたが、オメガがメス個体の場合、上位のオス個体が執拗に攻撃することは、アルファがいた時代には全く見られませんでした。また、1位の威光を着て下位個体が攻撃に入ることも、この家族で観察したのは初めて。これは1位のロイの性質なのか(1位が変われば、これがなくなるのか)、はたまたアルファがいないためなのか、繁殖期特有の雰囲気でそうなっているのかは分かりません。

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4対2の不利な状況を打破すべく、孤軍奮闘したリロ。ここまでのリロの動きを見ていると、アルファとしての素養を感じる行動をとっているのが嬉しかったです。メスの最上位という自覚がきちんとあるのだなあ。ただ、リロはオス個体が何をしようと口出ししない、というのが顕著なので、結局ロイはやりたい放題ですが…。
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ロキ(右)は結局、闘争には加わらず傍観して終わり。騒ぎが終わったあとにはミロを気遣ってか、そばに寄り添い、鼻を寄せていました。ミロも嬉しそうに見えます。彼も闘争に関してはなぜか性差を意識していて、オス同士の闘争には加わるものの、メスがやられている場合は何もしません。

さて、前回出てきたセロですが、彼はこの闘争のあいだ、遠くから背を丸めた状態で成り行きを見ていました。おそらく、ロイが主体になって始めたものだっただけに、巻き込まれることを恐れたのだと考えられます。オスの最下位ですから、当然の行動です。

セロと同じく、ミロもこの日あたりから攻撃される個体が増えてしまったため(メロやロト)、現在まで立場が悪化している状態です。ただ彼女の場合は、すぐにトンネルへ逃げ込むため、今のところなんとかやり過ごしているようです。

一連の闘争を見ていて、もしかしたら二派に分かれているのでは、と仮定して以前の記事を纏めてみました。境目は繁殖期特有の何かなのか、それとも彼らの主義(性差を区別する、区別しない、など)なのかは、結局解明されることがないまま、個体の隔離などがあって終焉してしまいました。
同日の不可解な行動はまだあるので、その様子はまた別の記事で。
by hana440 | 2015-04-29 00:22 | 多摩動物公園(オオカミ) | Comments(3)
Commented by ゆきうさ at 2015-06-03 14:02 x
こんにちは。
いつも楽しく拝読しています。
GWに多摩動物園へ行き、オオカミたちを見てきました。

夕方になって、日差しをしのいで日陰にいたオオカミたちが活動し始めても、ミロは集まっている仲間たちと合流せず、一匹遠くから長めていました。
ブログは昨年12月の様子を書いているので、半年弱たっても相変わらずの状況なの?と切なくなりました。
オオカミは、群れや家族を大事にすると聞いていたのですが、繁殖期となると別なのでしょうか。
少しばかりショックです。

ミロが仲間と合流できることを祈りながら、すばらしいタイミングの写真と、たくさんの動物たちのエピソード、これからも楽しみにしております。
Commented by hana440 at 2015-06-04 11:51
>ゆきうさ様
初めまして、コメントありがとうございます。

オオカミは家族を大事にする、というのもまた真実ですが、その様子が見られるのはほとんどが「親子」である群れのことが多いと思います。その家族の中でも序列がありますので、その順位を巡って、ときには厳しい闘争も起こります。

多摩の狼たちは兄弟同士、しかももうそれぞれが独り立ちをして、自分の群れを持ってもいい年齢を過ぎていますので、両親が亡き今、心がバラバラになっている状態です。みんな、もう「家族」「兄弟」という認識はなくて、個々の馬が合うorあわないことと、序列が存在しているのみなんだと思います。
ミロは立場が一番下だっただけに、上位個体の標的になりやすかったみたいです。
GW後、ミロはまた大怪我をしてしまって、きちんとした治療が必要になり、そのまま展示組から離れることになりました。もうロイのいる群れに入ることはなさそうです。ミロも、ひとり暮らしになって安心した表情をしていました。

現状を見ると悲しいですが、野生ならば子供が成長して群れがバラバラになるのはよくあることですので、これもまた、オオカミの生態の一部なんですよね…。

観察日記、今年からの分がまだ更新できてなくて申し訳ないですが、引き続き詳しく綴っていきますので、どうぞご覧になってくださいね〜
Commented by ゆきうさ at 2015-06-06 11:42 x
hana440様

こんにちは。
遅ればせながら、はじめまして。
こちらこそ、お返事、また連休明け後の状況を教えてくださり、ありがとうございます。

"ミロは大怪我"
連休後、身体的にも痛々しいことになっていたのですね。
それでも、"ひとり暮らしで、安心した表情をしていた"とのことで、ホッとしました。
仲間に追い立てられる毎日よりは、ひとりでも平穏に過ごせるほうが、いい状況に違いないですね…。

横並びを揺らさない狼の習性や閉じられた環境などがあっての、今の状況。
狼達の自然な行動が見られるのは歓迎すべきことですが、正直複雑な気持ちになります。
合流が叶わないことは個人的に残念ですし、ミロの怪我も心配ですが、次回動物園を訪れたときに、少なくとも、寂しげでない表情のミロに会えるかもしれないのは、とても嬉しいです。
いいお知らせ、ありがとうございました。

一日も早く、ミロが怪我から回復しますように。