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満身創痍のネロ、隔離へ(2014/3/15)

【ご注意】この記事では出血した状態の痛々しいオオカミの写真が多数あります。ぼかしなどは入れていませんので、苦手な方は「続き」以下はご覧にならないようお願いします。

10月くらいから最下位に転落したネロ。その後、年が明けてからは度々の怪我はあったものの、そんなに大きな負傷もなく、昼間は兄弟たちと一緒に放飼場で過ごせていました。(収容後はいざこざを避けるため、仲の良いセロ・ミロと一緒にして部屋を区切って過ごしていました)
再び大きな怪我を負ったのは3月1週目で、右耳とその後ろに酷い裂傷、無事だった左耳も損傷し折れ曲がりました。セロの庇護のもと、15日まではなんとか兄弟の中に入れていましたが、短期間のうちに更に酷い怪我を負ってしまい、収容後から完全に隔離されることになりました。

まずはこの日のネロ以外の兄弟の様子から。
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この日もセロが単独で遠吠えを始め、メスが反応して遠吠えに発展するパターンが多かったです。
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セロは3月に入ってからは、あまりネロにベタベタしなくなりました。この日の朝にネロが大怪我を負ったのですが、特に守ろうとする動きはありませんでした。ロボがいなくなった影響なのか、それとも守ることに疲れてしまったのか…。おそらく彼もロイの示威行動の対象になっていたせいもあると思います。
ただ、巡回行動の際、何度かモートでうずくまるネロを上から心配そうに眺めることはしていました。
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アルファのような調停役がいないのは確かですが、1位のロイ(左)、2位のリロが中心となり、他の兄弟たちは割とまとまっていたように思います。示威行動、駆けっこや戯れ合いなどもいつも通り見られました。昼間はロキが問題行動を起こしていたこともあり、ロイはそちらのほうへ意識が向いていたように思います。その様子はまた別の記事にしたいと思います。

続きは折り畳みます。長くなります。ネロの様子、とても痛々しいのでご注意ください。





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ネロはシュート前にいました。私が放飼場へ着く直前に、ロイや上位との闘争があったそうです。右耳が大きくちぎれて、首筋からは肉が見えている状態でした。耳、首の周りは血だらけ。さすがにこれだけの大怪我は私も見たことがなく、なかなか正視できませんでした。
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兄弟たちとの距離はこのくらい。距離が近くても平気、というよりは、恐怖心で固まってる…という雰囲気。
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シュート前に集合した時にロイやロトが(威圧の意志がなく)そばにきても、降参の表情や抵抗する様子もなく、ただ縮こまるだけでした。ミロやロキが心配した様子で寄ってきても同様に、ただ硬直してるだけ。写真で顔だけ見ると平気そうなんですけど、足がガクガクと震えているときもありました。
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(手前がネロ)兄弟たちがこちらへこないように、遠くからじっと警戒しています。もちろん、遠吠えなどには全く加わりませんでした。
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隙を見てモウコノウマ側のモート角へ避難し、収容まではここでぐったりとしていました。
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ロイが威圧に来たのは一度だけ。ネロが降参!と叫び声をあげ、何も攻撃せず一睨みして終了。ホッとしました。
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この日巡回行動の多かったミロ(後ろ)は、心配そうに何度もネロを覗き込んでいました。おそらくロイと一緒になって攻撃をしただろうロト(手前)も、威圧のためなのか、それとも大きな怪我を負ったネロを多少心配してか、覗き込む回数が多かったように思います。ロトが覗き込むと、落ち着きなくモート内を逃げ惑っていました。

お昼頃に担当さんがいらして、ネロの怪我の具合や群れの様子、隔離するかどうかについてをお話してくださいました。
多摩のオオカミたちは基本的に「群れのいざこざは群れの中で解決させる。飼育員は群れの一員ではないので介入しない」という方針です。怪我が酷くないうちは、群れに戻れなくなる「隔離」という手段はとらない、ということは前述した(記事の最後)通りです。
ここでネロを怪我が治るまで完全に隔離してしまうと、最下位という弱い立場にあった以上、もう兄弟たちのもとには絶対に戻れません。この時点では、担当さんは「まだ迷っている」と仰っていました。
3月初旬からのこの状態は重傷と言ってもいい怪我ですし、群れの中にいる緊張状態では怪我の回復に使う体力も少なくなること、今のところロイの様子を見るとその気はないように見えますが、闘争時のネロの出方次第で命が危ない可能性もあるのでは、ということをお話ししました。
私はいち来園者ですし、いつも彼らの近くにいる担当さんの判断が一番だと思っているのですが、今回はさすがに命に関わりそうで、隔離したほうが良いのでは…と伝えてしまいました。
隔離をしたあとの将来的な問題を考えると、担当さんが迷っておられたのも頷けます。

そこから午後までは、私の見ている間は特に何もなく収容になりました。収容する前にまた担当さんがいらっしゃり、「隔離することにしました」と伝えてくださいました。
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「お部屋に入るよー」の合図であるベルが鳴り、シュートが開くと、ネロ以外の全員が素直に入って行きました。ネロはここまで上がってきていません。
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いつまでもモートの角から動かないネロを、上から脅かして、なんとか放飼場へあげようとします。ネロがモートを登ろうと決心するまでに、とても時間がかかりました。
モートを登ったときに、放飼場に一旦手をついて首だけを出し、周りに誰もいないことを確かめてから放飼場にあがったネロ。
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すごく緊張した表情でした。見える範囲に誰もいないことを確かめると…、
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一日動けなくて喉が渇いていたのでしょう、たくさんお水を飲んでいました。この水場の周辺は陽当たりがいいので、いつも群れの誰かが休んでおり、ネロには近寄りがたい場所でした。
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お水を飲んでホッとしたのか、すぐにはお部屋に入らずに放飼場を散策していました。
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かなり安心している表情ですね。こんなに大きな怪我になったのだもの、とても怖かったでしょう。
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外の空気を楽しむようにウロウロして、わりと素直にシュートへ入って行きました。
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この日から、右のスペースの一番奥の部屋に、昼間も1頭で過ごすことになりました。表情に少し余裕を取り戻しているネロ。もう大丈夫だよ。怪我が早く良くなりますように、と念を送ってきました。
格子越しに兄弟たちが見られるようにしたのは、怪我が治ってから戻れる可能性を少しでも残すため。1ヶ月くらいはこの試みがなされていましたが、結局、みんなのほうが手狭になって給餌が大変になったことや、その後メスのマロを隔離せざるを得なくなったことなどもあり、現在は兄弟からは全く見えない部屋ですごすことになりました。

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開園日の日中は、室内の右側のスペースでネロに会える日もあります。群れから離れてすっかり安心したのか、耳はなくなってしまったものの怪我は完治し、今ではとても明るい表情です。
その点、昔に旧獣舎で隔離されていたロンとはまた違った心境なのだと思います。ほとんど遠吠えをすることもありませんし、ネロの中ではもう、戻りたいという意志は微塵もないように思えます。本来ならもう独り立ちしてもいい年齢ですし、ベータを務めたこともあるネロですから、ずっと独立したかったのかもしれません。
室内なので運動不足だけが心配ですが、淋しくないのなら、隔離はネロにとっても幸せな選択だったのでしょうね。それにしても、次代のアルファ候補だったネロがこんなことになってしまうとは、本当に残念でなりません。


【余談】いい機会だったので、もし放飼場で動物が大きな負傷をして動かなくなってしまったり、急病などで倒れてしまったのを見たときに、来園者はどうしたらいいのかを伺ってみました。
基本的には近くにいる動物園のスタッフ(警備員や清掃員、売店員なども含む)に知らせてくれれば、担当飼育員に連絡が行くそうです。周辺にスタッフが誰もいない場合は、園内パンフレットに書いてある電話番号へ電話をしてほしい、とのことでした。
これは多摩動物公園で伺った限りですが、おそらく他の動物園や水族館でも同じように対処して頂けると思います。ただ、このオオカミのように「動物の生態上、ある程度の怪我までは特に処置しない」という方針の園もありますので、やはり「倒れて動かない」とか「見るからに重傷を負っていてぐったりしている」という、来園者でも分かる深刻な状態であるところが、こちらから連絡する基準になりそうですね。

by hana440 | 2014-11-03 17:05 | 多摩動物公園(オオカミ) | Comments(0)